世界中のどこの海にも、いつの時代にも海賊というものは存在していたようなのだけれど、その中には交易商人が武装して身や積荷を守るために戦うものや、移民のための侵攻も含まれている。それに引き換えカリブ海や大西洋の海賊は犯罪者の集団という意味合いが濃い。いわゆる「海賊」のイメージの元になっている由縁だろう。
この地域の海賊の発生は、コロンブスの新大陸発見に端を発する。例の「いよー、国が見えたぞ(1492年)」というアレだね。
コロンブスはマルコ・ポーロの『東方見聞録』やフランス人枢機卿ピエル・ダイイの『イマゴ・ムンディ(世界の姿)』なんていう本を読んで、インディアスの探検を思い立った。インディアスというのは当時のヨーロッパ人がアジアのことを呼んだ名前だ。スペイン王国をスポンサーにして彼は大西洋横断の旅に乗りだし、2ヶ月かかって未知の陸地に到達した。これが実はカリブ海のバハマ諸島で、ついで南北アメリカ大陸にも到達したことはご存知の通り。
スペイン王国はカリブ海の島々と大陸に本格的に進出した。目的はズバリ!新大陸の富。
やがて1521年コルテスによるアステカ帝国征服、1533年のピサロによるインカ帝国征服というかなり強引なかたちで、スペインは莫大な富を手に入れた。さらに1545年にはボリビア高地のポトシで、銀の大鉱脈が発見され、スペイン王国はそれも独占した。
他のヨーロッパ諸国は焦った。焦ったからといって、スペイン船を襲わせるというのもずいぶんだと思うけど、実際に当時のヨーロッパ諸国は「私掠免状」を発行して海賊行為を奨励しちゃうんだなぁ。これが前回ちょっと触れたプライベーティアと呼ばれる公認海賊で、新大陸から財宝を積んでスペイン本国へ向かう船を襲った。
最初に大手柄を立てたのはフランスの公認海賊ジャン・フルリという人だそうだ。大西洋はアゾレス諸島付近で、コルテスがスペイン国王カルロス1世に贈呈するために送った3隻の財宝船を襲撃し、そのうち2隻を捕獲した。中身がスゴイよ。黄金と銀のアクセサリ、ハシバミの実ほどの大きさの真珠、ヒスイの小立像、儀式用のコスチューム、モザイクの仮面、羽根のついた頭飾り、3頭の生きたジャガー!!
この成功に奮い立ったフランスの公認海賊たちは、獲物が来るのを待っていられずカリブ海へと進出した。そのメンバーには北アメリカ大陸の大西洋岸を探検し、ニューヨーク湾を発見したジョヴァンニ・デ・ヴェラツァーノもいた。
フランス連の次はイングランド王国の海賊たち。有名なフランシス・ドレイクやトマス・キャベンディッシュといったエリザベス女王のプライベーティアもこの時期活躍した。彼らは掠奪のほかに、当時アジアにまで進出したスペインに対抗すべく新航路や未知の陸地を発見する任務も与えられていたみたいだ。このふたりは無事に世界周航を成し遂げて、財宝もたくさん分捕って帰国し、騎士(ナイト)の位を授与されたというから、あはは。
その他に当時の新興国、オランダ共和国のプライベーティアもいた。ピート・ヘインという人は1628年に31隻の大船団でカリブ海に潜入し、キューバ島の北でスペインの財宝艦隊(!)捕獲に成功。莫大な富を手にしたという。
いずれにしろこういったプライベーティアは、いわゆる海賊のイメージからはまだ遠い。本物の無法者たちについてはまた次回(笑)。