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2005年10月15日 (土)

アーサー王の話(4)

トマス・マロリーの『アーサー王の死』はアーサー王伝説の決定版といえる。以後、これに類する詩や散文が次々と生み出され、絵画の題材としてもポピュラーである。この題材を現代のファンタジイ作家たちも見逃さない。わたしが読んだのはマリオン・ジマー・ブラッドリーの『アヴァロンの霧』というシリーズだが、アーサー王伝説の現代的な解釈のひとつといえると思う。
 
 『アヴァロンの霧』の語り手はモーゲン。『アーサー王の死』ではモルガン・ル・フェ(妖姫モルガン)と呼ばれるアーサーの異父姉である。
 ウーゼル・ペンドラゴンが見初めたイグレーヌはティンタジェル公の奥方であった。マロリー版ではティンタジェル公とイグレーヌの間には3人の娘があり、上からモルゴース、エレイン、モルガンということになっている。それぞれロット王、ネントレス王、ウリエンス王と結婚するが、そのうちのロット王の妃となったモルゴースとアーサーは、互いに異父姉弟であることを知らずに過ちを犯し、その結果アーサーとキャメロットの滅亡の原因となるモルドレッドが生まれるのである。
 ブラッドリーは古代のケルトの宗教に女神崇拝を採用した。聖なる島アヴァロンの女王にして最高の巫女は、湖の貴婦人ヴィヴィアンであり、マーリンはその伴侶となっている。イグレイン(イグレーヌ)とモルゴースはヴィヴィアンの妹、モーゲンはイグレインのひとり娘である。マーリンとヴィヴィアンはブリテンに妖精族の血を引いた宗主を立てるため、イグレインをウーゼルに近づけてグウィディオン(アーサー)を得た。アーサーを指導者として認めるための秘儀のなかで、モーゲンは巫女として弟と交わる。秘儀の晩、アーサーとモーゲンは幼い時に別れた姉弟とは知らずに過ちを犯すが、翌朝気づいて罪の意識に苛まれる。アヴァロンの女王ヴィヴィアンに反発したモーゲンは聖なる島を出て、叔母のモルゴースのところへ身を寄せる。

 モーゲンは次の女王候補であり、巫女としての訓練を受けた妖精族である。対するグウェンフイファル(グウィネヴィア)は信仰厚いキリスト教徒ととして振舞う。アーサーはその間で揺れるブリテンそのものである。王妃に憧れるランスロットもまた妖精族の血を引く者である。ブラッドリーはランスロットをモーゲンの密かな初恋の相手に位置づけ、モーゲンの思いを通して、さらにキリスト教と古代の異教との関係を強調してみせた。グウェンフイファルに魅かれ、破滅の道を辿るアーサーやランスロットを、手もなく見ていなければならないモーゲンの嘆きというのが全編のトーンである。

 ケルト人の宗教は文字を持たなかったため全く資料がないそうだ。女神崇拝の宗教であったか否かはともかく、キリスト教と古代の宗教との関係は非常に納得できる。「僧侶の島グランストンベリとアヴァロンの聖なる島は同じ場所に位置し、秘法を知っているものだけがアヴァロンの島にたどり着ける。こういった秘法がキリスト教の神の力を侵害すると考えた僧侶達はそのふたつの世界が通じ合う門扉を閉ざしてしまい、今はキリスト教の僧侶の島へと続く道しか残っていない」という具合。
 キリスト教一色の中世ヨーロッパと違い、宗教の自由が保障されている現代で、また男女が平等で、ことによれば女性の方が元気のいい現代で、アーサー王伝説がこういう形に解釈されるのも、またひとつの時代の要請なのかな、と思ったり……。

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